どうしたって期待したい!!





居た堪れない。

そんな感情が無自覚にも自分の体を突き動かして彼との距離を離す様に駆け出していた。

風の音の中に『鈴原っ、』と呼ぶ声はすれど……、





「…………追いかけては……くれないんじゃん……」


振り切るように走ったのは確かに私だ。

それでも決して足が速いわけじゃない。

ましてや男の彼が本気で走れば容易に追い付いたであろうに。

限界だと息を切らして足を止め、不安と僅かな期待を持って振り返ったそこには幻ですら彼の姿はない。

所詮……私は彼にとってそこまでだったのだ。

そんな事実に追い打ちをかけられてしまえば……。



終止符を打ちざるを得ないじゃない。



どうせ実らない恋であるなら、

甘く芳醇であるうちに渡してしまえば良かったのだ。

生温い温度の心地よさにうっかり浸って放置してしまえば……

ほら見た事か、



食われる事なく腐り落ちて跡形もないのだ。




何の為に大きく甘くしたものであったのか。

馬鹿な私……。




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