どうしたって期待したい!!
気が付けば、飾りであった【Merry Christmas】と書いてある細長いバルーンを片手に駆け出していた自分の体。
勿論向かう先は今一番注目を浴びている2人のところだ。
雑踏を押し分け横切る私と言えば未だピンクのウサギのデカ頭姿で、まさに人混みをかき分け2人を目前に捉えた瞬間。
「っ……私だって……あんたなんか好きじゃなかったわよっ!あんたみたいなつま__」
「天誅ぅぅぅぅっ!!!」
「っ!?」
バイーンッッッ___っと、緊張感のないバルーンの音には格好良さは半減だろうか?
激情した彼女がまさに例の言葉を水城くんに浴びせかけた瞬間に飛び込んでバルーンで切りかかったのだ。
バルーンだし、痛みはない。
それにこんな奇怪なウサギにいきなりバルーンで殴りつけられれば高まっていた憤りも一瞬フリーズするってものでしょ。
飛び込んだ際に若干横にずれた頭をグリっと元に戻し、さすがにポカンとしている水城くんの前に背を向けながら彼女へとバルーンを突きつける。
「お前の価値観で水城くんをつまらないとか言うなっ!!」
「なっ……なんなのあんたっ!?」
「お前が『なんなの!?』だっつーの!!そりゃあね、女の子としてはカッコイイ彼氏に我儘ひっくるめて可愛いとか思って欲しいものですよ!どんな事も『仕方ねーな』なんてスマートに許して甘やかされたいってものですよ!それが理想であり、でも二次元彼氏だろそんなもんって言うのが現実でしょうよ!!」
「っ……」
って、あれ?なんか何故か野次馬の皆様がちらほら拍手してくれちゃってる。
えへっ、どうも。なんてぺこりと頭を下げて歓声に片手を上げて調子こいてみたけれど仕切り直し。