湖にうつる月~初めての恋はあなたと
ここであきらめたら何も始まらない。

どうしても京抹茶の抹茶を私にも卸してもらうには、父がかつて得た信用を私も得なければならないってこと。

信用か・・・・・・どうしたら信用を得ることができる?

この短期間に、私に抹茶を預けても大丈夫だっていう信用。

「山川さん」

「ん?」

「私、今から京抹茶に行ってきます」

「え?京抹茶って、京都にあるのよ?そんな遠くまでこれからって」

「得意先にはあと三件残すのみで皆さんにはご了承得てます。山川さん、残りの三件だけ連絡しておいて下さい。私、父の得た信用を私も得ない限り、きっと抹茶は卸してもらえないと思うんです。電話だけじゃ、やっぱり気持ちが伝わらないから」

山川さんは首をすくめるもすぐ頷き微笑んだ。

「なんだか今までお父さんの後ろにひっついていた真琴ちゃんじゃないみたい。真琴ちゃん、変わったわね」

山川さんはそう言うと、私の体をぎゅっと抱きしめた。

「いってらっしゃい。頼むわよ。今は真琴ちゃんだけがこのお店を守れる唯一の存在」

私は山川さんの背中に手を置き頷いた。

なんだかわからないけれど、体中の力が私の中心に集結している。

今自分がやらなければならないことがすごく明確になってそれが大きなエネルギーに転換している感じ。

でも、その力は紛れもなく澤井さんの言葉から生まれていた。

そばにいないのに、彼の存在を感じている。彼の言葉を信じていればきっとうまくいくような気がする。

私は急いで荷物をまとめ、山川さんに後のことはお願いして駅に向かった。
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