湖にうつる月~初めての恋はあなたと
「もう少しでできるから、君はソファーで待ってて。ミルクは多めでいい?」

「はい」

澤井さんの斜め45度の頬から顎にかけてのラインも、非の打ち所がないくらいきれいだと思いながら答える。

ソファーに戻る途中、見たくないのにまたその写真に目が向いてしまう。

その女性は澤井さんよりも随分小柄で、ふわふわとした茶色い髪。

色白で目はとてもつぶらだった。

私なんかよりも断然女性らしくてかわいいのに、目のつぶらなところはなんだか私に似てる。

なんて、どこかに共通点を見出そうとしている自分はなんて惨めなんだろう。

写真から目を逸らし、ソファーに戻って座ると、そのすぐ後でキッチンから澤井さんがマグカップをふたつ手に持って出てきた。

ソファーの前のテーブルにカフェオレがなみなみと注がれたマグカップが置かれた。

「ありがとうございます」

「口に合うといいんだけど」

私はマグカップを手に取った。

澤井さんとおそろいのこのマグカップを、ひょっとしたらあの写真の彼女は使っていたのかもしれない。

そう思ったら、一瞬口につけるのをためらってしまう。

澤井さんはそんな私を気に留めもしないで自分のカップを傾けておいしそうに飲んでいた。

「どう?」

マグカップを傾けたまま、澤井さんが私に視線を向けて尋ねる。

私は慌ててカフェオレを口に含んだ。

お店で飲んでるみたいにいい香りがして、そしてほどよいミルクの甘さがとろけるように喉の奥を流れていく。

「おいしいです。すごく」

澤井さんの方に顔を向けてきちんと言ってみた。

「よかった」

彼は嬉しそうに笑った。



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