湖にうつる月~初めての恋はあなたと
その後、澤井さんがクリーニングに乾燥手配してくれていた私のワンピースが丁度いいタイミングで部屋に届いたので急いで着替えを済ませ、私達はホテルの最上階にある高級レストランへ急いだ。

こんないかにもっていう高級レストランに足を踏み入れたことは初めてで、店に入ってから席につくまでずっとそわそわしている。

お昼からこんな豪勢な食事!?ってひっくり返りそうなほどの品々が目の前に次から次へと運ばれてきた。

私があまりに「おいしい!」を連発するものだから、澤井さんは「わかったわかった。だからもう少し小さな声で」と言って少し恥ずかしそうに笑った。

澤井さんは私を車で送るためにお酒は控えていたけど、私は少しだけワインを飲んだ。

1人で飲むのは気がひけると言ったら、澤井さんがここのワインはおいしいから是非にと勧めてくれた。

私は見かけも性格も地味だけど、お酒は結構好き。

おいしいワインは、お料理にマッチしていて少しだけ嗜むつもりがグラスを三杯も空けてしまった。

お料理が全て終わった頃には顔だけが熱くて、体もふわふわしている。

とても気分がいい。

「最高のランチをありがとうございました」

エレベーターで下に向かいながら澤井さんに頭を下げた。

「少し酔った?顔が赤いけど」

澤井さんはそんな私を見てくすくす笑っている。

よっぽど顔が赤いのかな。

昼間から恥ずかしすぎる。どうしてグラス一杯で自粛できなかったんだろう。

「すみません。1人で飲み過ぎちゃって」

「飲んでもらって俺も嬉しかったよ。せっかくの機会に君においしいワイン飲んでもらいたかったんだ。少しくらい酔った方が女性には隙が出てかわいいと思うよ」

そう言うと、澤井さんは優しく微笑み、私の右手をそっと握った。


・・・・・・。

えーーーーーー!!!!

手、握られてる!

顔が更に熱くなり、握られた手は自分の手じゃないみたいに感覚を失っていた。


「酔い覚ましに少しドライブでもしようか」

ワインの酔いも手伝って更にドキドキが加速している私に澤井さんはそんな提案をしれっとした顔でする。

地下の駐車場に向かい、澤井さんの大きな車の助手席に乗せられた。
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