アシンメトリー
あの日以来、メールは相変わらず毎日やり取りしていた。
何気ない当たり障りのない、会っても距離が縮まらず、ただのメールが続いた。
そして、高校3年生になり、クラス替えもあり、新学期が始まった日、私は別の人に一目惚れで恋をしていた。
あの人とは違って結婚もしてなくて、ずっと私の近くにいて、毎日学校で顔を合わせるうちに急速にその人と仲良くなった。
毎日電話をして、笑いあったり、私はずっとその人のそばに居たいと思った。
あの人とのメールをいつの間にか、続けるうちに私の中で罪悪感みたいな気持ちが生まれた。
嬉しかった気持ちも薄れて、私が待っていたメールは先生じゃなくて、きっと別の人。
本当に好きな人は誰?
自分の心に問いかけた。
そして、分からなくなって私はあの日電話をかけた。

何回かのコール音の後で、不機嫌そうに「はい…なんや?」と乱暴なイライラした声。
久々に聴いたあの人の声に私は何も感じなかった。
それが自分でも信じられなくて、「今から先生に会いに行ってもいいですか?私…」と勇気を出して言った私の声に被せるようにあの人はため息をつく。

「あのなー、もう俺も今から学校でるし。用事あるし、子供の相手ばっかりしてられんねん。」

その冷たい言葉に私は言葉が出てこなくて、何も言えなくなる。

それに被せる様に

「もう、俺からいい加減卒業してくれ。お前の事タイプやないねん。もう、俺なんか相手せんと、別の奴探した方がえーよ」

とトドメのような冷たい言葉が受話器から聞こえた。

私は泣きそうなのを必死に堪えて、「わかりました」とだけ一言言うと、「わかってもらえてよかった!ほんなら切るで」って電話が切れた。

電話が切れた後、私は泣いていた。
それはあの人の恋の終わりを意味してるって言うのがわかったから、そして、今の私ではあの人を振り向かす事も心変わりも期待出来ないと確信した。

「さよなら」

私は泣きながら、あの人の連絡先全て消去した。
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