愛してるからこそ手放す恋もある
専務に話してから2日が経った。
いつまで黙っていれば良いのかと思いながらも、何時ものように仕事してると、電話がなり、菱野専務がボスに会いに来ると言う。
専務はボスに何を話すんだろう…
ドアがノックされ、返事をすると、菱野専務が入ってきた。
「会議前以外で、菱野がここに顔だすなんて珍しいな?」
多分、菱野専務は私の事でいらしたんだろう。
ボスはどんな反応をするだろう…
自分の事と思うと、なんだか居ずらい。
「菱野専務もコーヒーでよろしいですか?」
私は返事も聞かずに部屋から逃げ出そうとした。
「いや、佐伯さんに関わる話だからここに居てくれる?」
やはり私の話だ。
「もっと早くに伝えるべきだったんだが、今月末で佐伯さんの契約期間が切れるんだが…」
「そうか…梨華はまだ契約だったんだな?」
「はい…それでお話が…」
私の話に被せるようにボスが「勿論、期間延長するんだろ?いや、この際、正社員にすれば良い」と、言った。それに対し、菱野専務は
「その話なんだが、佐伯さんを正社員にするのは私も賛成する。しかし正社員にするには支社での1ヶ月の研修を受けてもらわなくてはならない」
1ヶ月の研修?
そんなのあった?
「はぁ!?そんな規則無いだろ!?仕事出来る人間を雇うのに何が問題なんだ!?」
私も聞いたことない。
「いや、アメリカと日本では考え方が違う!」
確かにアメリカの企業に買収されたとはいえ、本社と日本との勤務規定には多少の違いがある。
「なら、規則を変えれば良い!?そんなクソみたいな規則俺が変えてやる!梨華の仕事ぶりを見ての正社員への契約なんだから!誰も文句言わないはずだ!」
私の仕事を評価してくれる事は嬉しい。でも、これから1ヶ月も休む人間をボスは変わらず評価するだろうか…
もし、そこに私情が入れば、ボスの立場が悪くなる。
「折角、佐伯さんへの風当たりが弱くなったのに、お前がそんなだと、また、佐伯さんが働きにくくなるぞ!?」
「……1ヶ月だな?」
「あぁ、1ヶ月研修した後、佐伯さんが望むなら、正社員に迎える」
「仕方ない。人事をお前に任せていたからな?梨華、1ヶ月したら、戻ってこいよ!?」
「…………」
「梨華!?」
「は、はい!ありがとうございます」
菱野専務は話は終わったと言って部屋を出ていかれた。
私は来月からの勤務先を聞いてないとボスに言って菱野専務を追いかけた。
「専務…」
「研修頑張って」
ただそれだけ言って、ご自分の部屋へと向かった。
専務は私の居場所を残す為に考えてくれたのだろう。
ありがとうございます…
私は専務の背中に頭を下げた。