愛してるからこそ手放す恋もある

「菱野専務、少しお時間頂けますか?」

朝、廊下で菱野専務を見かけつい声をかけていた。
専務は私の顔を見てただならぬ事だと思ったのだろう。
専務は秘書に暫く席をはずすように言い、そして私を専務の部屋へ招き入れ話を聞いてくれた。

「木村さんから少しだけは聞いていたんだが、そうか…なんといったら言いか…」

「それで、申し訳無いんですけど、辞めさせて…」

「いや、辞めて貰っては困る。今、君に辞めて貰っては会社の存続に関わると思う。君の事より、会社の事を優先してるようで申し訳無いが、辞めないで欲しい」

辞めないで欲しい。と、言ってもらえるのは、凄く嬉しい。だが、治療をしなければ命を縮めてしまう。そうなれば、家族を悲しめることになる。今まで、支え続けてくれた家族をこれ以上悲しませたくない。

「でも…」

「悪いようにはしないから、決断するのは少し待ってもらえるかな?」

私は「…はい」と返事をしてボスの部屋へと向かった。


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