愛してるからこそ手放す恋もある
彼に渡されたチケットと、指輪、それから一緒に退職届を菱野専務へと渡した。
「本当にいいの?なにも辞めなくても…」
「すいません…初めから(彼と男女の関係になった時から)決めてましたから…ご迷惑お掛けすると思いますが、後の事宜しくお願いします」
「その後体調はどう?」
最近、体の左側に少しマヒが出てるような気がして、菱野専務には全てを話していた。もし、会社で痙攣を起こした際に誰か事情を分かっていた方がいいと思ったからだ。
「とくに変わりはないです」
頭の転移した患部に放射線を当てていたが、その患部が膨張してきていた。その事事態はよくある事らしい。医師からも様子を見ようと言われていた。
だが、先日実家に帰っていたときに、痙攣を起こし救急搬送されていた。それからというもの、常にスマホを手離すことが出来なくなっていた。会社では、少しでも何かあれば、すぐ菱野専務へ連絡できるようにしていたのだ。
「本来なら、栄転で喜ばしい事なんだが…君なら、本社でも十分やっていけると思うし…でも、頭の中が膨張してる状態だと、飛行機はむりか…?」
「分かりません…医師にも聞いてませんから」
はなから行く気が無いのだから、医師に聞いても仕方がない。
この先いつ痙攣が起きるかわからない。
そして今度痙攣を起こしたら、手術をすることになると医師に言われてる。
どれだけ家族に心配かけるのか…
「これ以上家族に心配かけたくありませんから」
海をわたり心配する家族の元を離れることは出来ない。
そして1ヶ月後仕事を辞めて家に戻ることを決めていた。
「見送りはどうする?辛ければ…」
「大丈夫です。最後までやり通します…」
多分、私が空港に行かなければ、彼は心配して帰る日を延期するからもしれない。そうなると私が本社へ行かないことがバレてしまう。
「分かった…きっと俺、浩司に恨まれるだろうなぁ」
「申し訳ありません…」