愛してるからこそ手放す恋もある
こちらの返事も待たず、突然開いたドアに驚いて居ると、誠のお母さんが入ってきた。そしてその後ろから誠が入って来た。
「お義母さん!」
やっと会えた誠だが、なんだか元気無いようで、いつもと様子が違う。
どこか遠くへ行ってしまったみたい…
こわい…
誠…?
「誠から話は聞いてましたんよ。でも店が急がしゅぅてなぁ。ほんまかんにんやでぇ?」
「いえ、お忙しいところわざわざ遠くまですいません」
「ほんまとぅかったわぁ。でもよかったわぁ梨華さんがお元気そうで、わても安心しましたわぁ」
何だろう…お義母さんとの間に壁を感じると言うか、まるで知らないひとみたい。
あっそっか!いつも”梨華ちゃん“って呼んでくれてたのに今は、”さん“になってるんだ。
え?どうして?
ねぇ誠?
「梨華さんやっぱり髪抜けてしまったんやねぇ?可愛そうに…昔から髪は女の命やゆぅのになぁ」
「はい…」
「でも心配せぇへんでもそのうち生えてきますやろ?」
「はい…」
「あーそぅそぅ、忘れるとこやったわぁ!これなぁうちからのお見舞いやねんけど?」と銀行名の入った分厚い封筒を渡された。
え?なにこれ!?
「誠…」
私の呼び掛けにも、誠は顔を背けて私を見ようとしなかった。
「誠はうちの大事な跡取りなんよ?150年続いた辰巳屋の暖簾を守っていって貰わんと!分かりまっしゃろ?」
「それは後継ぎの産めない私は要らないと言うことですか?」
「誤解せんとってなぁ?梨華さんの為を思っての事なんよ?嫁いで来て貰っても後継ぎが産めんで、肩身の狭い思いさせては、可哀想思いますのんや!」
「辰巳さん!今、そんな話しなくても!」
声を荒げたの母だった。