愛してるからこそ手放す恋もある

翌日からも小野田さんは会社へ向かい清掃会社の社員として仕事をしていた。
そして自宅に戻ると、書斎に籠り、出てこない。

私が夕食を用意したと知らせると、やっと書斎からは出てきてくれる。

だが、やはり食事は取らず、リビングのソファーに座り自ら用意したアルコールを片手に書類をみる。と言う日々を送っていた。

「小野田さん!いい加減食べてください!折角作ってるんですから!」

「そんなに食べろと強要するのは何か理由があるのか?」

「…理由って…小野田さんの体を心配してるんじゃないですか!?」

「俺の体の心配?」

「そうです!私の作る料理が気に入らないなら、言って下さい!何でも用意しますから!」

「じゃ、俺の母親の作る飯」

「………」

「冗談だ!母親の顔すら知らないんだ、どんな飯作るか、どんな味の物作るのかすら全くしらないさ!」

冗談と言いながら、切なさそうな顔を見せる。
小野田さん…

「俺の事は心配しなくて良いから、もう自分の部屋へ帰れ!俺は仕事する」と言って小野田さんは書斎へ向かった。

小野田さん…やっぱりお母さんに会いたいのかなぁ?会いたいよね?どんな理由で自分を捨てたか聞きたいよね?
だっていくら恨んでいても母親は母親だもん。

『ドッサ!』

え?なに今の音…
音のした方を見れば書斎の入口で小野田さんが倒れていた。

「小野田さん!小野田さん!」

どんなに声を掛けても応答が無い。急ぎ救急へ電話をし、菱野部長へも連絡した。




< 47 / 133 >

この作品をシェア

pagetop