私を救ってくれたのは君でした。
「………わかったよ、やるだけやるよ」

「おう、それこそ天宮だ!」

「じゃあね鶴谷くん。ありがとう」

「おうよ、頑張れ!天宮なら、出来る!」

私は家の中に入った。下を向くと、真っ赤なヒールが置いてあった、お母さんの靴だ……ということは、お母さんは帰ってきている。でも、男の人の靴がない、今日は連れ込んでいないのか?一階にいるのか明るい電気が出ていた。
帰ってきた時に男の人がいないなんて、久しぶりだな。
私は自分を勇気付けるため、グッとポーズを取った。そして大きく一回深呼吸をする。

『天宮なら、出来る!』

『今進まねぇでいつ進むんだよ』

鶴谷くんの言葉が、脳内に入ってくる。このひとことだけで、とても勇気付られた気がするよ。ありがとう鶴谷くん。
あなたに言われると、本当になんでも出来てしまいそうだ。

ガチャ

私は一階の部屋のドアを開けた。

「ただいま。お母さん帰ってたんだね」

お母さんはひとりボツボツと言っている。

「……黙っててくれない?あなたの声なんてききたくないの」

私はそれでも話を続ける。負けないんだ、私は、お母さんになんか、負けたくないんだ。

「今日の夕飯はなに?楽しみだな…」

「黙れって言ってんでしょ!私に馴れ馴れしくしないで!」
< 70 / 82 >

この作品をシェア

pagetop