副社長は花嫁教育にご執心
送信したものの、なかなか既読が付かない。最初は仕事が忙しいのかと思ったけれど、深夜零時をまわっても何の連絡もなく、段々心配になってきた。
まさか、事故とかにあっていないよね? もしそうなら、一番に妻である私に連絡が来るはずだよね?
リビングのソファに膝を立てて座り、スマホを握りしめて心細さと戦っていたその時、玄関の鍵がはずれて、ドアの開く音が。
「灯也さん……!」
よかった、帰ってきてくれた……。話したいこととか、今はどうでもいい。無事に帰ってきてくれてよかった……。
そんな思いでリビングを出ていき、廊下をぱたぱたと駆けて、彼を出迎える。
「おかえりなさい、遅かったですね……?」
しかし、灯也さんは私の声掛けには全く答えず、ぼそっと「シャワー浴びてくる」と告げ、私を避けるようにしてバスルームへと消えてしまった。
あれ……? どうして、そんなそっけない態度なの? やっぱり、小柳さんに昼間のことを言われて……?
私は一日中灯也さんに会いたかった。そしてやっと会えたのに、一度も瞳が合わなかったことが悲しくて切なくて、どうしても黙っていられない。