副社長は花嫁教育にご執心


「……実はさ」

俺は、まつりの浮気疑惑について、藤田久美に言われた通りのことを小柳に伝えた。

すると、彼は俺以上に激しく憤り、なぜか俺の代わりにマンションへ行ってくると言い出した。

いつも何を考えているかわからないポーカーフェイスの彼だが、そういえば意外に情に厚かったんだっけと、今更のように思い出した。

「その話が本当なら、彼女には制裁が必要だな」

そして、ちょっとSっ気もある。お前が制裁とか言うと、ちょっと怖いよ。

「いや……絶対、何かの間違いだとは思うんだけど」

「杏奈だって、見た目は純情なのに中身はあれだろ。初心に見える女性ほど侮れないものだ」

「お前、自分の彼女のこと悪く言うなよ」

「それでも俺は、そんな杏奈が好きだから問題ない」

へえ。なかなか言うじゃないか小柳。何はともあれ、杏奈とうまくいっているようで安心した。

結局俺は、第三者である小柳の方が状況を客観視できるような気がして、彼をマンションに行かせることに決めた。

藤田久美の話は、何かの誤解。帰ってきた小柳が、いつものポーカーフェイスでそう言ってくれることを信じて。


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