副社長は花嫁教育にご執心


不満を抱きつつも、外に出て眩しいほどにきらめくパウダースノーを見ると、一瞬心が浮上した。

三人で斜面を歩いて少し上り、人の少ない適当な場所に落ち着いたところで、私ははしゃいで灯也さんに言う。

「私、こんなにたくさんの雪、初めて見ました」

「……へえ。世間知らずなのね」

えっ。と思って隣を見ると、私と灯也さんの間に割り入るようにして、杏奈さんが冷たい視線をこちらに向けている。

なんというか、さっきからちょっとあからさますぎません……!?

だいたい灯也さんに話しかけるときと声のトーンまったく違うし!

灯也さんは険悪な私たちの様子から目を逸らすようにして、私に話しかける。

「まつり、まずボードのつけ方と転び方を教えるから……」

「ねえ灯也、早く滑りましょうよお」

杏奈さんが甘えた声でくいくい灯也さんの腕を引っ張る。その上目遣いから、ハートの光線が出ているようだ。

「いや、だから先にまつりにもボードを」

冷静に説明しようとする灯也さんにつまらなそうな顔をした杏奈さんは、自ら地面を蹴って斜面を滑り出す。

「きゃー、どうしよう、止まんない、灯也ぁ」

「ちょっ……何やってんだ」


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