大好きな彼は超能天気ボーイ
そんなある日の事だった。

当時僕らが中学に入って数ヶ月の頃。

梨乃の両親が…離婚したのだ。


それに、
親父さんの浮気現場にも遭遇してしまった。

慌てて彼女の目を塞いだが、それも遅く梨乃を傷つけてしまった。


それから、クラスの奴らも梨乃をいじめるようになった。


教室で公開的に梨乃を罵る奴ら。

梨乃の心はとてもデリケートで、そいつらの言う事をダイレクトに受け取ってしまうこと。僕はそれをよく知っていた。



梨乃の前に立ち、僕は何度も庇った。

でもその度に、梨乃は僕にごめんねと謝る。
何にも悪くないのに。
そして僕の胸の中で泣く梨乃。

僕はそいつらから梨乃を完全に守ることなんか、出来なかったんだ。


こんなみっともない僕に、梨乃は
「私は功が好きだよ。」なんて言ってくれる。


でも彼女の表情は、やっぱり曇りがあって…

こんな顔…絶対にさせたくない。


そんな事を思うようになっていた。



それから一年後。

梨乃は学年を重ねるたびどんどん女性らしく、綺麗になっていく。

校内1の美少女と噂されてたのも知ってた。

何度か呼び出され、告白されている梨乃をみて、ふつふつと湧いてくる腹黒い感情。

これが嫉妬だと気づくのに、時間はかからなかった。


あいつじゃなくて僕だけを見てほしい。
そんな事を思っていたんだ。

だから僕は、だんだん梨乃に依存する形で甘えてしまうようになった。


梨乃は能天気だなんて言うけど、実際それ以上に酷いものなんだ。


梨乃は両親の離婚の事もあって、誰とも付き合わないって僕に言ったんだ。


その時は流石に折れそうになった。
梨乃が辛い思いをしてるのもよく分かってたし、だからこその強い決意なんだって…


僕も一応モテたんだよ?
でも梨乃しか頭になくて、全部断ってきた。


今はそんな梨乃が、僕のだけの大切なものになっている。


梨乃のどこが好きか。それは一つ。
可愛らしいところだ。


料理を楽しそうに作るのも可愛い。
くしゃっと笑った笑顔も、
キスするとすぐ照れるのも、
無邪気にはしゃいでるのも、

全部、可愛い。


いつからなんて分からない。
でも梨乃にずっと前から惹かれていたんだと思う。


今もホテルで蟹を美味しそうに頬張る梨乃。

ダイエット中とか言ってなかったっけ?

可愛い奴め。

そんな彼女の頬を、僕はそっと撫でた。





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