オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
<side 成久>

「なんか思い出したら中央町にある“guns and roses(ガンズ・アンド・ローゼス)”って店に言いに来いっ」


そう、佐々が言ったとき、今までのイキの良さはどこへやら、男たちの体が固まった。

そりゃそうだろうな。

一見センスのいいそのバーは、一般の客も多いけれど、ここら辺をしめてる暴走族とかチームとか、まあガラのいいほうじゃない連中のたまり場みたいなところだ。

かといって、誰かれ入れるってものじゃない。

その幹部連中。


「そおいう遊びは中学までだって、ご両親と約束したんじゃなかったか?いいのか?…佐々」


一応念押しをするけれど、無駄なのはわかっている。

佐々を取り巻くピリピリと張り詰めた空気が、そばにいるだけで痛いくらいだ。

俺が初めて佐々を見た時と重なる。


「…神崎(かんざき)」


――おっかない声……


つるんでる俺でも、一瞬ギクリとする。

携帯の向こう側から、相手が酷く慌てた声が漏れ聞こえてきた。


「オンナ探せ。霧里花美ってオンナだ」


可愛そうに、あの子…、花美ちゃん。

正直、気の毒になる。

こんな勝手なオトコに惚れられて、しかも無駄に力を持ってて、頭もいい。

俺の情報網に引っかかるまで5日間かかったんだ。

本気で逃げてるんだろう。

でも……


――佐々からは逃げられないよ。


「いいな、見つけても絶対に手ぇだすんじゃねえぞ…、無傷でオレんとこ連れてこい…ああ、わかった。成久に写真送らせる」

「お~い、なんで俺が花美ちゃんの写真持ってることになってんの」

「シラ切ってんじゃねぇ、成久。コンパん時、流れた写メあるだろ」

「……」


――バレてるし……


「はあ~……」


無意識にため息が漏れた。

こうなったら仕方がない。

やる以上は、スマートに行こうぜ?

佐々のやり方はカッコいいけど、荒っぽいんだよ。


「…了~解。佐々、代わって」


俺からも神崎に注意事項。

現役のアタマがOBでもないヤツに、顎で使われるのもどうかと思うけど……

佐々、カリスマだったからなぁ~、

案の定、神崎は興奮して“佐々君”を連発してた。


「あんまり佐々の名前出すなよ?お前が兵隊動かしたってことにしてろ。バレそうになったら俺の名前出していいからさ。文句言ってくる連中は見当つくし根回ししとく。いいな?」


花美ちゃんの写真をを送り終えて、眼鏡を外す。

星空を見上げる後姿に、レンズ越しでは見えなかった、佐々の本気が見えた気がした。

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