オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
それから3日後。

花美ちゃんが消えてちょうど1週間目の夜。

現役連中の、数に物を言わせた人海戦術はさすがとでも言うべきか、佐々が持っている例の携帯に神崎からメールが送られてきた。

添付された画像には、大きなエコバックを肩にかけて、道路脇でしゃがみ込んでいる花美ちゃんの姿。

買い物の帰りなのか?

Tシャツにジーンズ。

被ったキャップから、ゆるく編んだみつあみがシッポみたいに垂れていて、

目の前には、猫。

野良猫に魚肉ソーセージかなんか、エサやっている。

コンパに駆けつけたときの、女っぽいエレガントな彼女の姿とは、まるで対象的だ。

穏やかな、笑顔。

あの時も笑ってはいたけれど、余裕の無い感じだった。

それは、優華ちゃんもだったけど。


『もう…いい』


そう言って垣間見せた、ひどく感情の無い表情が俺も気になってはいたから、少しホッとした。

あとで、優華ちゃんにも見つかったことを知らせてやろう。

きっと、安心する。


「え~と…佐々?」


携帯持ったまま、動かない親友に声をかける。

さり気なく覗いてみるけど、相変わらずの無表情だ。

花美ちゃんを探すように伝令をとばしてから、佐々はずっとこんな調子。

感情を表に出さない。

そもそもの恵まれた容姿に加えて、この雰囲気だ。

頂点に立つ人間のオーラ。

いまだに、佐々の一声でこれだけの人間が動く。

でも、目の前のコーヒーの氷はとっくに溶けてて、グラスも結露して水浸しだ。


――なんだかなぁ…


つい、顔が緩んだ。


「……なんだよ…成久。なにか言いたいことあんなら言え」


俺の事なんか見ちゃいなかったくせに、カンのイイやつ。

大体、目が…さ、感情を隠せてないんだよ、俺から言わせれば。


「ないない。別に、なんもないって」


そう言ってんのに、よほど気に入らないのか、佐々はまだ俺を睨んでいる。

しょうがないなあ……


「じゃあ、お言葉に甘えてひとつ。その場所行くのは明日にしろよ?俺、もう寝るし。大体こんな真夜中に行ったところでどうにもならないからな?」

「……わかってるよ」


――ウソつけ…


すると、カウンターの中から、司(つかさ)さんが声をかけてきた。
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