オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

「…おい…お前ら、いいかげんにしろよ?」

「…成久っ」


両手をポケットに突っ込んだまま、

成久がテーブルを蹴った足をゆっくりと降ろす。


パキッ……


踏み潰したガラス片の音が、静まり返ったフロアに響いた。


「誰がこの場をセッティングしたのか、わかっててやってんだろうな?俺のカオ潰す気なら、それなりの覚悟してもらうぞ」


久しぶりに聞いた、成久のドス声。

キレた目しやがって…

ムカついてんのはなぁ、オレのほうなんだよ…っ


「上等だ…」


このオンナが来るなんて知ってたら、いくらお前の呼び出しだって、来るかよっ。

オレは、成久を睨みつけながら出口に向かう。

そのまますれ違い、

お互いが振り返りもしないまま、声だけが背後から響いた。


「…座れっ、佐々!」

「指図すんな!」

「俺が花美ちゃんの事を調べてんのは、お前に頼まれたわけでも、命令されたわけでもないぞっ」

「当たり前だ、誰が命令なんかするかよっ!…お前は」

「親友のお前が惚れた女だからだ。佐々っ…!分かれよ!!」


オレは階段を下りる手前で立ち止まる。


「あ~…、クソッ!」


ドカッ!


階段のすぐ側にあるテーブルの椅子に腰かけた。

成久は軽くため息をついて、優香に声をかける。


「優華ちゃん、こっちのテーブルで話そう。そっち、メチャクチャだし、足元、気を付けて」

「オレと態度が違いすぎだろ…」

「そりゃ、好きな子だし、やさしくぐらいするさ」

「……」


――はあっ!?


さらっと、何言ってんだ、こいつ。


思わず顔を上げると、成久を映した視界の端に、優華が見えた。

テーブルがひっくり返ろうが怒鳴り声が響こうが、微塵も怯まなかったオンナが、

その目に一瞬だけ動揺の色を混ぜ、すぐさま取り繕う。

垣間見えた、隠し切れない心の揺れ。

それがひどく意外で、毒気を抜かれた。
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