嘘つきお嬢様は、愛を希う



「え、なに? 大丈夫?」



まさか体調が悪いのかと手を伸ばすと、逆にその手をガシッと掴まれた。



「……じっとしてろ」



驚いて手を引っ込めようとした私にボソッと声を落とした理月は、やけに真剣な顔で袖をまくり始める。


な、なんだ……捲ってくれるだけか。


いきなり掴むからびっくりしたじゃない。



「あ、ありがと」



意外にも器用な手つきに感心しながらお礼を言う。


大人しく両腕をまくられながら理月の顔色を窺うと、やや赤みを帯びているような気がして。


あれ?と思う。


さっきもふらついてたし、風邪でも引いたのかな。


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