嘘つきお嬢様は、愛を希う
『まあ、俺は見越してたぞ。お前が総長になったら胡蝶蘭の形はある程度変わるだろうってな』
「…………」
『いやむしろ……だからこそ、お前に任せると決めたんだ。変わらぬものもあれば変わりゆくものもあるからな。特に組織の頭なんてのは、時に大きく変わることも必要だと思った』
「……あんた、大翔さんみたいに起業でもしたらどうだ?」
『あいにく俺は実家の農家を継いだからな。今はこっちが忙しいんだ』
柊真さんが総長に昇進後、空いた幹部の座についたのは言うまでもなくこの俺だった。
別に何か功績を残したとかそういうわけではなく、胡蝶蘭にさえ入りたてだった下っ端の俺を一目見て幹部に引き上げたのだ。
何故かと何度か聞いたことはあるが『野生の勘だ』としか答えられたことがない。