嘘つきお嬢様は、愛を希う
謎めいた人だな、という曖昧な印象しかなかったが、実家の農家を継ぎに田舎に戻るため総長の座を降りる──と言い出した時は、いささか耳を疑ったものだ。
柊真が総長の座を降りると同時に、当時の幹部であった玲太さんと唯織さんも胡蝶蘭を離れ、3代目メンバーの中ではひとり櫂さんだけが残り──。
──それでも。
「変わらねえことのが多い、と俺は思うんだがな」
確かに俺と雅さんのやり方は違うかもしれない。
しかし同時に、柊真さんと俺のやり方も違う。
そりゃそうだ。
誰も彼も同じ人間じゃない。
俺には俺の歩んでいく道がある。
そして俺に『お前らしい胡蝶蘭にしろよ』と言ったのは、紛れもなく柊真さんだ。