嘘つきお嬢様は、愛を希う


謎めいた人だな、という曖昧な印象しかなかったが、実家の農家を継ぎに田舎に戻るため総長の座を降りる──と言い出した時は、いささか耳を疑ったものだ。


柊真が総長の座を降りると同時に、当時の幹部であった玲太さんと唯織さんも胡蝶蘭を離れ、3代目メンバーの中ではひとり櫂さんだけが残り──。


──それでも。



「変わらねえことのが多い、と俺は思うんだがな」



確かに俺と雅さんのやり方は違うかもしれない。


しかし同時に、柊真さんと俺のやり方も違う。


そりゃそうだ。


誰も彼も同じ人間じゃない。


俺には俺の歩んでいく道がある。


そして俺に『お前らしい胡蝶蘭にしろよ』と言ったのは、紛れもなく柊真さんだ。

< 208 / 370 >

この作品をシェア

pagetop