嘘つきお嬢様は、愛を希う
「──また連絡する」
『ああ。なんかあったら呼べよ。胡蝶蘭は俺にとっても大事なもんだ。ヘルプが入ればいつなんときも駆けつける』
「ふっ、そうならねえように統率すんのが総長の役目だろうが」
『まあそうなんだけどな』
体に気をつけろよ、という言葉を残して通信が切れる。
俺は浅く息を吐き出しながら、窓から月を見上げた。
淡く儚い色を放つ朧気な月。
まるで桐乃みたいだな、と思うのは何故なのか。
「俺もいい加減向き合えってか。皮肉なもんだな」
自嘲気味に呟いて、俺は幹部室を出る。
階段をあがり突き当たりの部屋の前で立ち止まると、少しばかり迷いながらそっと扉をノックした。