嘘つきお嬢様は、愛を希う


なにもかも深い霧に埋め尽くされていくような感覚に陥りながら、私はゆっくりと重たい瞼を伏せた。


この手を伸ばした先になにがあるのか。


そこに誰がいるのか。


望むものも、望まぬものも──。


私が求めるものも、捨ておくものも──。


なにもかもを超えた先に、君はまだいるだろうか。


もしもまだ、その先へ行くことが許されるなら。


もしもまだ、君が私を求めてくれるなら。


……あともう少しだけ。


もう、少しだけ……。
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