嘘つきお嬢様は、愛を希う




それからどのくらい経ったのか、不意に誰かの声がして目が覚めた。


ここ、どこだっけ……。


鉛のように重たい体にどうにか力をいれて身じろぐと、思っていたよりも近くから「おや」と声が降ってくる。



「目が覚めたかな? 胡蝶蘭のお姫さま」


「……あなたは……」



額から左目にかけて大きな傷跡のある男。


大翔さんよりも少し年下、くらいだろうか。


貼り付けた笑みを崩さず、私の傍らにしゃがみこんで首を傾げる彼に、頬がひくっと引きつった。

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