嘘つきお嬢様は、愛を希う
◇
それからどのくらい経ったのか、不意に誰かの声がして目が覚めた。
ここ、どこだっけ……。
鉛のように重たい体にどうにか力をいれて身じろぐと、思っていたよりも近くから「おや」と声が降ってくる。
「目が覚めたかな? 胡蝶蘭のお姫さま」
「……あなたは……」
額から左目にかけて大きな傷跡のある男。
大翔さんよりも少し年下、くらいだろうか。
貼り付けた笑みを崩さず、私の傍らにしゃがみこんで首を傾げる彼に、頬がひくっと引きつった。