嘘つきお嬢様は、愛を希う


「総長ぉぉぉお!」



どこかで聞いたことのある声が悲痛に響き、ガチャガチャと慌ただしく部屋の扉があけられる。


「……はあ、騒がしいな」


「ああ、総長ぉ〜! 大変ですよォ」


「なにかな…………龍靭くん」


「今絶対名前忘れましたよねェっ!? まぁいいですけどぉ、ヤツらもうそこまで……ぐえぇっ!?」



喋っている途中で矢倉に殴り飛ばされた龍靭の元総長は、思い切り壁に衝突してベチャンと潰れた。


ヒッ、と息を呑んだのは私の方で、飛ばされた本人は矢倉に見下ろされながら「す、すみませェんっ」と身体をくねらせた。


……相変わらず、気持ち悪い。


殴り飛ばしたくなる気持ちもよく分か……っちゃいけないんだろうけれど。

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