嘘つきお嬢様は、愛を希う


「私は贅沢なのかもしれない。でも他の全てを捨てたからって、それが手に入るわけじゃないんだ。この手の中に愛を掴むのは、きっとなにより難しいよ」


頬を掴む手に縛られた手をそっと乗せると、くしゃりと顔を歪めた矢倉に即座に振り払われる。


おまけに次の瞬間にはお腹に一発、男の靴先が食い込んでいた。



「っ、かはっ……」



強い衝撃波と想像も出来ない壮絶な痛みで呼吸が止まる。


地面にゴロゴロと転がって、あまりの痛みに身体を丸めたまま唸るしか出来ない。



「う、ぐ……」


「……痛いかい?」


「……あん、た、は……っ」


「そのまま苦しんでいるといいよ。バカの相手をする趣味はないからね」



──その時だった。

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