嘘つきお嬢様は、愛を希う
「それになんか好き勝手言ってくれちゃって……。私が絶望したのはもうずいぶん前の話だよ。こんなところに囚われたからって、今更絶望がどうの思わない。だいたい逃げようと思えばいくらだって逃げれたんだし。
──ああなんか、腹が立ってきた。あんたのせいでまだあっちこっち痛いんだけど」
人間の急所を抑えながらひねりあげた腕に力を込めながら、桐乃は「いてて」とお腹をさすった。
さすがに驚いて声も出ないらしい瀬良と風汰の横を突っ切って、俺は矢倉を一発蹴りあげてふっ飛ばした。
……その辺で寝てろ、クソ野郎。
抵抗することも出来ずに転がっていく矢倉を一瞥して、俺はバサッと桐乃の肩に着ていたジャケットをかける。
「…………」
「…………」
桐乃は戸惑ったように俺を見上げて、それからどっと力が抜けたように後ろへ倒れた。