嘘つきお嬢様は、愛を希う
「梶谷、理月」
おそらくあの男は、櫂さん以上にあの人に近い。
毛先だけクセのある黒髪。
闇に染まった瞳。
遊んでいるようで、まったく隙のない動き。
こちらを見下ろす時の、深い海の底を漂うようなオーラ──。
挙げたらキリがない。
感覚的なものだけでも、私がこの十七年間生きてきて学んだものを凌駕してしまうほど、梶谷理月はある意味『完璧』な人間だった。
それゆえに、まだ、脆い。
総長なんて立場にいるくらいだから、確実にその場所へ近づいてはいるけれど……。
私の知る限り、本当の意味で『てっぺん』にのぼりつめる人間は必ず犠牲を背負うことになる。
欠かしてはならない──なにか大切なものを失う。
それがなにかはわからないけれど、きっとそのうち、理月にもそんな瞬間がやってくるだろう。