暴君と魔女
なんて・・・・不憫な。
視界に捉えた瞬間から頭に浮かんだ感想。
どうしたらそこまで黒い物を引きずり歩けるのかと思ってしまう程の姿に思わず意識が働いた。
彼を失ってから、あまり見える人のそれには意識を移さないようにしていたというのに。
確認したくなるほどの明確さに視線を移せば、抱えている人の淡麗な姿。
それでも不機嫌そうな気難しそうな人だとどこかで思う。
対面する方向から歩いてくる彼は私とすれ違った直後に頭上から植木鉢が落ちてくる。
それを運よく避けられてもその後には銃撃される。
なんてスリリングで命がいくつも必要な人だろう。
そんな事を思い距離を縮めて素通りするつもりだった。
すれ違う直前に垣間見た闇の中。
子供の頃の孤独や姉との関係、家系の重圧。
重苦しさを全て感じてすれ違いざまに思わず口ずさむ。
「落下物にご注意を・・・・」
その声に反応し、僅かに振り返った気配を感じた。
それでも振り返る事なく歩き続ければ背後から響く陶器の割れる音。
ああ、きっと回避出来たのだと安堵して、あとはこの後も回避出来ればいいと他人事に思い歩いていた直後の衝撃。
後ろからグッと肩を掴まれ引き戻される。
振り返れば絡む鋭い視線。
ゾクリと鳥肌が立ったのを今も忘れない。
それが・・・・、望様との出会い。