暴君と魔女
決して・・・・愛さない人だと思った。
横暴で、残酷で、
人の気持ちなど考えていない暴君で。
ただ、秋光を愛するのに必要な環境を与えてくれる条件だと、傍にいる事を決めたんだ。
馬鹿にされても嫌われないように、呆れられても手放せないように自分の力を彼に与える。
馬鹿みたいにその結果に満足する姿に若干の呆れ。
でも、本当は垣間見て知っている彼の押し隠している本心。
閉じ込められ愛を与えられずに育った姿は傷だらけの王様なのだと感じてしまう。
それでもまだそれへの執着を失ってはいないから、垣間見せるその片鱗に敏感に反応し彼を嫌う事が出来ない。
むしろ、どこか秋光の置かれた境遇に類似して、擬似的にでも彼に愛を教えたくなる。
それが・・・・過ち。
愛は、与えれば返される物だと忘れていた。
擬似的な物でもそれを繰り返せば麻痺していく感覚。
慈善事業で始めた筈が気がつけば本気になっていく心。
それに気がついて牽制を示したのはあのキツイ香水の匂い。
望様からそれが香った瞬間に感じた嫌悪と嫉妬、裏切られた様な感覚。
取られたと思ってしまった自分の意識に驚いた瞬間に気がつき恐怖の記憶の回想。
黒い煙が視界を覆って、言い様のない絶望に畏怖して沈む。
そして感情に蓋をして、言い聞かしてその力を取り戻す。
自分は魔女。
決して目の前のこの人と愛し合う事があってはいけないのだと。
秋光の為に、
この人の為に。
傍にいられるだけで充分なのだと言い聞かせ私は魔女でいる事をただ望んだのだ。