暴君と魔女
「・・・・柔らかく・・・・なられましたね」
耳に響く声が体に染みる。
今までの疲労も忘れそうなそれにまっすぐ四季を見つめれば、返される柔らかい頬笑み。
求めていた、
あの日のままの四季の姿。
だけど、・・・それも少し違うか。
「お前も・・・・、少し変わった」
「・・・・老けましたか?」
「いや、・・・・・俺があまり知らない女の形になった」
そう、俺にはあまり馴染みのないその姿。
相変わらず柔らかく慈愛に満ちた四季の姿なのに、俺の前にいた時とは形を変えて、より柔らかく、より温かく感じるその空気。
それは・・・・、
そのせい・・・・いや、おかげなんだろ?
チラリと視線を走らせ、四季の腕の中にしっかり抱きかかえられているものを見つめる。
それを抱えたまま走るものだからこっちは心臓がいくつあっても足りない気分だ。
なぁ、四季・・・・、
それが理由だろ?
「四季・・・・」
俺の声に四季が酷く緊張したのが分かる。
動揺に揺れるグレーアイが俺のこの後の言葉を予測している。
「そうなんだろ?」
「っ・・・違います」
主語のない言葉に、それでも理解した四季が感情的にはっきりと返す。
言いきってそれを隠すように体を捻る姿に、まだ四季は俺を受け入れていないのだと感じた。
それでも、・・・・今更引くと思うのか?
「四季・・・」
「違うんです」
「嘘をつくな」
「っ・・・ついてな・・」
今にも泣きそうな表情で否定するように首を横に振る姿に痺れを切らし、警戒し止めていた足を踏み出すと四季も素早く動こうとした。
「逃げるなっ」
「っ・・・」
「逃げても・・・・、捕まえるまで追いかける」
もう、どこまでも追いかける。
そんな決意にも似た脅迫を響かせると、ビクリと反応しながらその場にとどまるその姿。
悪いな。
もう、俺は分かっているんだ。
さっきの俺の叫びに反応してこうして足を止めたお前の心がまだ俺にあるって事は。
だからこそ、違うと言われてもそれを信じて疑わない。
走るでも急ぐでもなくゆっくり四季に近づいていく。
俺の接近に視線を逸らし、精一杯の抵抗の様に身を捩る四季に再度の確認。