海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
俺はあのときと同じように音楽室に入り、音楽準備室と繋がっている道のそばに音をたてないようにして寄った。
「来ないかと思った」
あの男の声がした。
やっぱり......あの先輩か。
折山さんのこと、あんなに泣かせたくせに......いったい、なんの用なんだ。
「俺、律花のこと、まだ好きだ。
もう一度俺と、付き合ってほしい」
先輩は、俺が一番伝えたいことを......
糸も簡単に彼女に告げた。
......さいあくな場面だ。
折山さんは、なんて言う?
聞きたくない。
今すぐここから立ち去りたい。
だけど、足が固まったみたいに動かない。
折山さんの“考えたい”という返事は、ホッとしていいのか悪いのか。
心臓が痛い。