海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。


「お待たせ」


彼はわたしとは目を合わせず、それだけ言ってベッドとは反対にあるテレビに向かう。


「このコメディの観よっか」


わたしが気づいてないと思っているのか、なにもなかったかのようにDVDをセットしようとする。


その誤魔化す態度に、わたしはものすごく腹が立った。


「...観ない」


「...え?」


「観ないって言ってるの!」


立ち上がって隣にあった枕を彼に投げつけた。


「律花、ーー」

「ッ海くんのへたれ!意気地無し!!バカ!!!」


わたしが寝ているあいだにわたしのしてほしいことするなんて、ずるいよ。


自分はそれで満足かもしれないよ。


だけどもしわたしが眠ったままだったら、わたしにはなにも伝わらないんだよ。届かないんだよ。


海くんのわたしにキスしたいって気持ち、わからないままなんだよ。


たしかにわたしも待ってる身だったけど、わたしが寝ているあいだにこっそりするくらいなら、真っ正面からしたいって言ってよーー。

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