【完】キミさえいれば、なにもいらない。
すると、その時ぽつっと上から何か降って来たことに気が付いた。


あれ、雨だ……。


さっきから雲行きが怪しいなとは思ってたけど、とうとう降り出してしまったみたい。


ぽつぽつと雨は、一ノ瀬くんの体にも降り注いで、彼のカッターシャツに雨粒のシミができていく。


それを見ていたら、なんだかいたたまれない気持ちになった。


どうしよう……。


さすがにもう、これ以上は彼にこんな事させられないよね。


こんなふうに探し続けていたら、一ノ瀬くんが風邪をひいてしまうかもしれない。


そう思った私は、そっと彼の腕を掴んで、声をかけた。


「も、もういいよ。雨降ってきちゃったし。もう私、あきらめるから……」


せっかく探してくれたのに悪いけど、これ以上付き合わせるわけにはいかないから。


だけど彼は、私がそう言っても探すのをやめようとしなくて。


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