【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「あーっ!あった!見つけた!」


彼の甲高い叫び声がその場に響いて。


「えっ、ウソッ!」


どうやらバレッタが見つかったみたい。


信じられない。まさか、本当に見つかるなんて。


「あったよ!雪菜のバレッタ!」


言われて自分も溝の中をじっと覗き込む。しかしながら、パッと見どこにあるかはわからない。


「今、一瞬掬い上げたんだけど、滑って落っこちちゃって。でも、手前のほうに落ちたから、今度は手で拾えるかも」


一ノ瀬くんはそう言うと、溝の中に向かって、さらに身を乗り出そうとする。


「えっ、手で……?」


「ちょっと待ってろ。今取ってやるから。今から俺ギリギリまで顔突っ込むから、もし落っこちそうになったら俺のシャツ引っ張って。まぁ、最悪落ちてもいいけど」


「えぇっ!?」


なにそれ。大丈夫なのかな?


「あ、危ないよっ」


なんだか心配になってきて声をかけると、一ノ瀬くんは自信満々な顔で言う。


「大丈夫。俺、身体能力だけは自信あるから」


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