【完】キミさえいれば、なにもいらない。
その後、幸い近くの公園のベンチの上に屋根がついていて、雨宿りできるようになっていたので、私はそこで彼の手当てをすることにした。


泥で汚れたバレッタと手を水道で洗った後、二人でベンチに腰かける。


私はまず、持っていたタオルハンカチを取り出して、雨に濡れた彼の髪や体を拭いてあげた。


「やだ、一ノ瀬くん、すごい濡れてる。ちょっとじっとしててね」


「えっ……」


すると彼は戸惑ったような声をあげたかと思うと、急におとなしくなって。


そのまま本当にじっとして、動かなくなる。


途中目が合って、彼の顔をよく見たら、驚くほど真っ赤になっていて、なぜだかすごく照れているみたいだった。


なんだろう。こういうの、恥ずかしいのかな?


さらには一ノ瀬くんの手の甲の傷に、絆創膏をそっと貼ってあげる。


ゴツゴツした骨っぽい手は、いかにも男の子の手って感じで、私の手よりもずっと大きく感じる。


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