【完】キミさえいれば、なにもいらない。
一ノ瀬くんの手の甲をよくよく見ると、先ほど溝に手を突っ込んだ時、何かにぶつけてひっかいてしまったのか、傷ができている。


「あぁ、ほんとだ。いつの間に。まぁ、このくらい平気だよ」


彼はそんなふうに言うけれど、私はとてもじゃないけど放っておくなんてできない。


だって、今バレッタを探したせいでケガしたんだから。


「でも、血が出てきてるよ。手当てしなきゃ」


「いいよいいよ。気にすんなって」


遠慮するようにそう告げる一ノ瀬くんの体に、パラパラと雨が降り注ぐ。


いつのまにかさっきよりも、雨が少し強まってきたみたい。


「ダメだよっ。私、絆創膏持ってるから」


だから私はそう言って彼の腕を掴むと、手当てのため、どこか雨宿りできる場所へ連れていくことにした。


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