【完】キミさえいれば、なにもいらない。
待ち合わせをした駅に二人で戻った時のこと。


名残惜しい気持ちのまま、先輩にバイバイしようとしたら、手をぎゅっと握られて。


そのまま突然唇にキスをされた。


一瞬のことで、私は何が起こったのか、すぐにはわからなかった。


衝撃のあまり、何も言葉が出てこなくて、その場に固まってしまう。


先輩はその後ニッコリ笑って、『またな』って言うと、そのまま電車に乗って帰っていったけれど、私は半ば放心状態だった。


だって、生まれて初めてのキスだったから。


私にとって、ファーストキスだった。


大好きな彼からのキス。


陸斗先輩からは特に「好きだ」とか、告白をされたわけではないけれど、私は嬉しくてたまらなくて、完全にうぬぼれてしまった。


先輩はやっぱり私のことを好きなんだって、そう思った。


だって、普通好きでもない子にキスなんてするわけないし、デートにだって誘うわけがない。


まぁ、うちのお兄ちゃんならやりかねないけれど、陸斗先輩はそんな人じゃないはず。


このままきっと私の恋はうまくいく。そう思い込んでいた。


幸せの絶頂だった。


< 182 / 370 >

この作品をシェア

pagetop