【完】キミさえいれば、なにもいらない。
言葉にしたらだんだんとまた悲しくなってきて。しまいには涙があふれてきた。


先輩は、泣きながら問いただす私を、黙ったまま見つめる。


『私、ずっと、先輩のこと、好きだったのに……』


今さらのように気持ちを打ち明けたら、先輩は静かに謝ってきた。


『……ごめん、悪かった』


さらに付け足すように語り出す彼。


『でも、好きじゃないっていうのは、ちょっと違うよ。あの時俺が雪菜に惹かれてたのは、事実だから』


『えっ……』


それは、衝撃的な発言だった。


先輩が、私のことをわずかでも好きでいてくれただなんて。


だからあの時キスしたっていうの?


でも、じゃあなんで、急に冷たくなったりしたんだろう。


やっぱりわからない。


『でも俺、気が付いたんだ。これは恋愛感情とは違うんじゃないかって』


『なっ……』


陸斗先輩はそう告げると、私の頭にポンと手を乗せて。


『雪菜のことは、大事な妹みたいに思ってるよ。今でもそう思ってる。だから、あの時のキスのことは謝るよ。ごめんな』


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