【完】キミさえいれば、なにもいらない。
その名前を聞いて、ドクンと音を立てる心臓。


ねぇ、どうして陸斗先輩がそんなこと言うの?


「な、何で先輩が……」


「雪菜は純粋だから心配でさ。とにかく、騙されないように気を付けろよ」


先輩はそう言って私の肩をポンと叩くと、その場に立ち上がる。


「それじゃ、また放課後な」


そしていつものように爽やかな笑みを浮かべると、階段を上って先に行ってしまった。


私もそこでようやく立ち上がる。


だけど、なんだか胸の奥がすごくざわざわして、落ち着かない。


陸斗先輩は一体何を考えているのかな。よくわからないよ。


私が誰と関わろうと、彼には関係ないはずなのに。


どうして今さら構ってくるんだろう。


どうして彼方くんのことを悪く言うんだろう。


さっきの先輩の忠告が、なぜか頭の中で引っかかっている。


陸斗先輩の言うことなんて、本当かどうかわからない。気にしなきゃいいってわかってるのに。


それができない自分にすごくモヤモヤしてしまった。


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