【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「本番でも、雪菜はそれ着るの?」


「う、うん。たぶん」


「マジで。すげー似合ってるじゃん。俺、絶対行くから」


「そうかな、ありがとう」


照れながら私が下を向くと、彼方くんがボソッと呟く。


「でも正直、可愛すぎて他の奴にはあんまり見せてほしくないかも……」


「えっ?」


ドキッとして顔を上げたら、彼はいたずらっぽくニッと笑った。


「ははっ。なんてね」


その笑顔にまたドキドキが加速していく。


ねぇ、どうしてそんなことばっかり言うのかな。


可愛すぎるとか、ちょっと大げさだと思うんだけど。


でも、今はそんな彼の言葉を素直に嬉しいと思える自分がいる。


彼方くんの言葉はどうしてか、冗談とかお世辞には聞こえないから。全部彼の本音のような気がするから。


正直最初はメイド服なんて自分には似合わないような気がして自信が持てなかったけれど、彼方くんにまでこんな褒められたら、もう本当にこの衣装を着るしかないような気がしてくる。


おかげでなんだかますます文化祭本番が楽しみに思えてきた。


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