3月生まれの恋人〜first christmas〜


『知り合いの店ですんごい旨いとこあるんだけど、そこならすぐに食えると思うんだ』



俺の言葉に、彼女がこくこくと大きく頷く



『クリスマスの雰囲気はゼロに等しいと思うんだけど・・・』



一応、先に断りをつけると、全然大丈夫!と言い切る彼女

予定は完全変更で、俺は歩いて来た道を引き返す

五分ほど、歩いて見えてくる店



『すごい!もしかして、あれ?』



目ざとく気付いた彼女が突然はしゃいだ?声を上げ店を指差した。


あぁ、そう



『うん、あれなんだけど・・・』



彼女の指差したところに有るのは一軒の古い“おでん屋台”

家業の豆腐屋を継いだ中学の先輩が、半分趣味で開いているようなそんな店



『やっぱりやってんな・・・』



つーことは先輩、今年もロンリー・クリスマス

女連れで行ったら、後日ひどい目に遭うかも・・・

でも、何故だか異常に喜ぶ彼女を見ると、もうどうでもよくなってしまう

近づいて見ると、先客はくたびれた親父が一人



『こんちわ』



暖簾をくぐって先輩に挨拶すると、先輩は驚いた顔を俺に向けた
< 21 / 31 >

この作品をシェア

pagetop