3月生まれの恋人〜first christmas〜
彼女は口へ運んだ大根をもくもくと無言で食べきると



『美味しいっ!』



とこれまた極上の笑顔で答えた。



・・・可愛い!
やっぱり可愛い!

がっ、目の前の先輩も俺と全く同じ顔をして彼女をぼんやりと見つめている!

彼女が喜んでくれたのは真剣に嬉しいが
ここに連れてきた事はやっぱり間違いだったと確信する

豆腐屋やらおでん屋やら今でこそ地味な商売をしているけれど

実は先輩は、中学の時からここらじゃちょっと名の知れた女たらし

ちょっと見る目の肥えた奴なら、絶対に彼女の良さに気づかないはずは無い

案の定、先輩は今までに見せたことのない甘い顔をして

俺を無視して彼女に笑顔を振り撒いている


ここは危険だ。


兎に角早く腹を満たして、なるだけ邪魔の入らない所へ行かなくては!

俺は、割り箸だけが乗った空の皿に、手当たり次第におでんをつぎこむと
それを猛スピードでかっ食らった


元カレ“カズマ”だけならいざ知らず、先輩にまで入り込まれてはたまらない。

何としても俺のものにしたいって、強い独占欲。

それは、俺が初めて感じるいささか苦い感情だった。
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