冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「なんだか信じられなくて。私が今ここにいるの……いいのかな?」

 実感が湧かずに、不安にも似た感情がどうしても消えない。白状して告げれば、スヴェンがそっとライラの前髪に触れた。

「いいもなにも夫婦だろ。フューリエンとか関係なく、俺がそばに望むのはお前だけだ」

 スヴェンの言葉で、モヤモヤしたライラの気持ちが晴れていく。自然と笑顔になりライラはスヴェンの額に自分の額を合わせた。

 綺麗なふたつの深い碧がスヴェンを捉える。

「これからも、よろしくお願いします。旦那様」

 おどけていってみせ、ライラから軽く唇を重ねる。意外な行動にスヴェンは目を見張った。それを受け、ライラが困惑気味に眉尻を下げ頬を赤くする。

「私も……したくなったの」

 今までのお返しと思って小さく告げると、スヴェンは回していた腕にさらに力を入れ、ライラを腕の中に閉じ込めた。

 そのまま強引に口づける。ライラは戸惑いながらも瞳を閉じ、彼からのキスを受け入れた。

 長くて甘いキスに先に根負けしたのは息を止めていたライラで、思わず唇を離す。けれど瞬時に口を塞がれ、キスは続けられた。

 どのタイミングで息をすればいいのかわからず、酸素を求めてわずかに口を開けると、その隙間に舌を滑り込まされる。

 初めての感触に驚いて、反射的にライラは顎を引きそうになる。ところが、それをスヴェンが阻んだ。

「逃げるな」

 吐息を感じるほどの距離で発せられた声には切なさも入り混じっている。頬に手を添えられ、射貫くような眼差しにライラは心臓を鷲掴みにされた。
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