冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
けっして嫌ではなくて、ただ経験がないからどうすればいいのかわからない。それをスヴェンも見越している。

 そっと髪を撫でられサイドの髪を耳に掻き上げられると、ライラは見開いていた瞳をわずかに伏せた。それを合図に口づけは再開される。

 今度はわずかに唇の力を緩めてぎこちなくもスヴェンを受け入れた。

 触れるだけの口づけを何度も繰り返され、舌も使ってゆるやかに懐柔されていく。

「んっ……ん」

 キスは完全にスヴェンのペースだった。けれど一方的なものではなく、時折ライラの頬や頭に触れ、気持ちを落ち着かせてやる。

 ライラはスヴェンのシャツをぎゅっと掴み、なんとか応えようと必死だった。その姿がいじらしくてスヴェンの欲を煽る。

 奪われるような口づけに翻弄され、ライラは目眩を起こしそうだった。荒い息遣いも甘ったるい声も、すべてが刺激となって知らぬうちに自分からも求めてしまいそうになる。

 唇が離れ、ライラはスヴェンの顔を見ることなく彼にもたれかかった。肩で息をするライラをスヴェンは優しく抱きしめる。

「ライラ」

 耳元で低く名前を呼ばれ、ライラの背筋が震えた。恥ずかしくて顔が上げられずにいると、露わになっている首筋に生温かい感触を感じる。

「ふっ」

 思わず声が漏れてしまい、なにかに必死に耐える。スヴェンはゆっくりと彼女の白い肌に舌を這わせ、肩口に音を立てて口づけた。
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