冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「フューリエンなんて言われながら、私には特別な力なんてなにもない。そばにいてもあの人のためにできることは、ありません。弱っていく彼がそれをいつ悟るんだろうって、待っているようでずっと恐れていました」

 ファーガンが天に召される瞬間、きっと自分に浴びせられるのは裏切られたという憎しみと悲しみだけだ。

 罵詈雑言か、恨みを募らせた瞳で見つめられるのか。それとも自分の瞳が片眼異色ではなくなるのが先か。そんな想像をしては怯えていた。

 ライラは哀しげに嘲笑った。

「だから、あなたが屋敷を訪れ部屋にやって来たとき、少しだけ安心したんです。この生活が終わるんだって。彼の最期を見なくても済むんだって。自分から逃げ出すこともできなかったのに……」

 自分はたしかにフューリエンの血を引くのかもしれない。けれど中身は正反対だ。他人になにも有益なものをもたらすことができず、失望されるのに怯えてばかりで。

 自己嫌悪で心臓が痛み、ライラは顔を歪める。

「でも、あの男は結果的にお前に救われたんだろ」

 唐突に発せられたスヴェンの言葉にライラは大きく目を見張る。

「信じるフューリエンから直接、髪と加護の言葉を頂戴したんだ。それに縋って残りの人生を少なからずは心穏やかに過ごすせるんじゃないか」

 スヴェンの視線は切りそろえられたライラの髪に向けられた。あそこで思いきった行動を取った彼女は、ファーガンの目には救世主そのものだっただろう。
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