冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
ぽつぽつと事情を話したところで再び沈黙がふたりを包む。ライラが居た堪れなさを感じていると、意外にもスヴェンが口火を切った。

「昼間は悪かった」

 前触れのないスヴェンの言葉にライラは思わず顔を上げた。スヴェンは机を挟み、ライラの前のソファにゆったりと座っている。視線が交わり、スヴェンは軽く息を吐いた。

「お前を物扱いするつもりはない。すべては叶えられないが、希望は口にしてみればいい。お前の意思もとりあえずは聞いてやる」

 ぶっきらぼうな言い方だが、スヴェンなりの最大限の譲歩だった。ライラにもそれは伝わる。

「ありがとう、ございます」

「制約は多いが、少なくともあの男の家にいたときよりはマシに過ごせるだろ」

 『あの男』というのが、メーヴェルクライス卿ファーガンを指しているのはすぐに察した。と、同時にライラの顔が曇る。

「……あの人は、どうなるんでしょうか?」

「さあな。お前の話から察するに、手の施しようのないほどに病に侵されているなら、そう長くはないだろ」

 興味なさげにスヴェンが切り捨てる。続けて黙り込んだライラに訝し気に尋ねた。

「どうした? まさか最期までそばにいてやるつもりだったのか?」

 皮肉交じりの問いかけにライラはかぶりを振った。

「私、怖かったんです。あの人のそばにいるのが。責められるのが怖くて……」

 絞りだすような声だった。無意識に膝の上に置いてあった手がドレスの生地を掴み、皺が寄っていく。
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