冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
そこでスヴェンの方に顔を向けると、眼差しだけで人を殺めそうな鋭い視線をルディガーに送っている。もちろん付き合いの長い彼はものともしない。

「そんな顔をするくらいなら、素直に彼女の心配をしてやったらどうだ?」

「元々こんな顔だ」

「スヴェン」

 親友の名を呼び、ルディガーは改めてスヴェンを見遣った。彼の表情にいつもの茶目っ気はない。

「これだけは言っておく。あのことを引きずっているのはお前だけじゃない。優しくするのが無理でも、必要以上に彼女を突き放すのはやめろ。彼女自身、自分の運命に翻弄されている身だ」

「憐れんでやれと?」

「そういう話じゃないだろ」

 まっすぐなルディガーの視線と言葉にスヴェンは押し黙る。なにかを返す前にルディガーは調子を取り戻した。

「まったく。この話はやっぱり俺が引き受けるべきだったのかもな。少なくとも俺の方がお前よりも優しい」

「思ってもないことを言うのはやめろ」

 いつものように軽口を叩いたルディガーに、スヴェンが皮肉めいた嘲笑を浮かべる。

「お前もたいがいだろ。いつまでも安全な高い位置から見下ろしているつもりでいると、そのうち足をすくわれるぞ」

 誰が、誰に、というのは抜けていたが、言いたい意図は十分に伝わったらしい。ルディガーは意表を突かれたように大きく目を見開き、苦々しく笑った。

「まさかお前にそんな言葉をかけられるとはな。忠告痛み入るよ」
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