砂糖よりも甘い君

次の日。


私は鏡の前で固まっていた。


だって私は可愛い洋服を持っていないから。


自分に興味がなくて、いつも動きやすくて逃げやすい服装を探していたから。


凛斗様の隣を歩くと言うのに、私は一体なんていう恥さらし。


深くため息をつくとテレビから朝の番組のアナウンサーの元気な声が聞こえてきた。


『本日のこれ見て！は、来週公開される映画『君と恋する図書室』。冴えない女の子の主人公が学園の王子に求愛されるドキドキのラブストーリーです』


あ、この映画って確か凛斗様が出てる……。


ラブシーンがたくさんあるって凛斗様言ってたっけ。


私にはハードルが高いと言っていた。


『公開前に、主人公を演じた今話題の新人女優、松下(まつした)愛理(あいり)さんと、学園の王子を演じた大人気アイドルユニット、honeyの吉澤凛斗さんにお話を伺って来ました』


テレビ画面に映る二人はキラキラしていて、横に並んでいてもおかしくなくて。


松下愛理ちゃんは本当に可愛くて憧れの女の子だった。


凛斗様が爽やかに笑っているだと……？


すかさず録画ボタンを押す。


好きな人の出ている番組を録画してもう一度あとで見るなんて……。


なんかストーカーみたいだなと思いながらも私は画面にくぎ付けだった。


『お二人は今回の映画が初共演ですよね？お互いのイメージって、どんな感じでしたか？』


『テレビでずっと拝見していたアイドルが目の前にいる！って思っただけで緊張でしたよ。私、ずっとhoneyのファンだったんで嬉しかったです。本物は本当に王子様でした』


『王子なんて、そんなことないって。母親がアメリカの生まれで、その血が入ってるからそう見えるだけです。僕も松下さんの事は聞いてましたし、演技を見た時は驚きました。凄いって素直に感心しましたね』


楽しそうにお互いの事を話している二人。


いいな……。


こうやって私も普通に話せたらいいのに。


だけど私にはそれが出来ない。


頭を必ずよぎるのだ。


いじめられて、生きる事を諦めようとしていたあの時の事。

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